抄録
大起伏な付加体堆積岩山地において,豪雨によって発生する深層崩壊の発生場および発生時を予測するためには,1)崩壊に先立つ斜面の重力変形に伴って形成される微地形の検出,2)地質的不連続面に規制された水文地質構造の把握,3)降雨に対する山体地下水の長期・短期的応答の解明が必要である.本講演ではまず,2011年に発生した紀伊半島における深層崩壊災害の事例から,これらの視点からの研究の必要性を述べる.次に,大津市葛川地区において,大起伏な堆積岩斜面を調査対象に設定し,上述の3つの要件を満たすべく地形計測・地質調査および水文観測を行った結果を紹介する.葛川地区では,航空レーザー測量によって詳細なデジタル地形モデルを作成した.その結果,流れ盤構造をなす斜面において,重力による変形の結果形成されたとみられる馬蹄形の段差地形が多数確認された.また,斜面では標高の異なる基盤岩湧水が多数存在し,湧水点にはしばしば断層粘土が確認された.複数の湧水で地下水流出を観測したところ,流出波形は,いくつかのパターンに分類され,一部の湧水では,近傍で掘削したボーリング孔内の基盤内地下水位の変動と調和的であった.