「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の成立などを指して、現在、木材産業・木造建築に対して追い風が吹いている、と評価することが多い。しかし、公共建築物はこれまでRC造や鉄骨造であり、材料強度に基づく明快な設計手法が確立している。すなわち、これまで他材料・他工法のみを手がけてきた建築関係者が問題なく自由に扱えるように、木材関係者がこれまで以上の努力を払うことで、設計の手法や材料の性能に関する知識・技術を確立しなければ、やはり木材は使えない、使うに足るだけの材料ではない、という全く逆の結末に達する可能性が高い。先人が築いた今日の木材産業のあり様を、貶めないためにはどうすればよいのかという致命的な問題に対して明確な解決策を提示することは難しいが、大きな命題を構成する個別の要素について検討することであれば可能であろう。本発表は、このような考えを端緒とし、国産材を工業資源として利用するにあたって解決すべき個別の技術的問題について整理する。