抄録
八ヶ岳南東麓地域の山地帯から亜高山帯にかけての草本植物を対象に、(1)標高傾度と生態的特性の関係と、(2)同標高における登山道沿いと森林内で卓越する生態的特性の差異を明らかにした。
植生調査によって得られた92種の草本植物の分布データを基に解析を行った。文献から収集された34の生態的特性と環境要因データをCCAによって序列化し、軸と各特性の関係を評価した。
その結果、常緑葉、動物被食散布など11の生態的特性については標高傾度に伴う小気候の変化に対して有意な正の相関があった。逆に夏緑葉、シカの不嗜好性植物など11の生態的特性については、有意な負の相関があった。
登山道沿いと樹林内において卓越する生態的特性の標高パターンは類似していた。このことから2つの立地の差よりも標高による小気候の変化の方が生態的特性の変化に影響が強かったことが考えられる。しかし地中植物、動物付着散布、自動同花送粉等は、特に低標高の登山道沿いにおいて強い相関を示した。これらは攪乱の影響が強い環境でより顕在化する生態的特性であり、低標高の登山道沿いにおける撹乱強度・頻度の強さから発現したものであると評価された。