落葉は定期的に供給される主要な有機物であり、その分解過程で発生するCO2は森林の炭素放出を把握する上で重要である。積雪を伴う冷温帯においては、落葉の重量減少過程と菌類群集を調べた先行研究があるが、落葉の無機化に伴うCO2の放出(分解呼吸)を調べた研究はほとんどない。そこで、本研究では日本大学水上演習林のブナ林において、リターバック法を用いてブナ落葉の分解実験を行った。月に1度の頻度でブナ落葉の重量減少量を調べた他に、赤外線ガスアナライザーを用いて、分解呼吸量を測定した。環境要因として温度やサンプルの含水比も計測した。また、土壌含水率と地温、気温を測定した。これらの調査は積雪期も行った。2011年の5月にブナの落葉を回収し、6月にリターバッグを設置した。リターバッグの回収と呼吸測定は、2011年8月から2012年の11月の各月に1回行った。落葉の分解呼吸速度は、地温の変化におよそ同調し、夏期に高く、冬期に低くなった傾向がある反面、冬期の積雪下では、温度が低いにも関わらず、リター含水比が高いため、積雪期前後と同等の呼吸速度が観察された。無積雪期では異なる条件で分解が進むと考えられる。