抄録
近年,林地残材のバイオマス資源としての利用が進められている。人工林を含む森林生態系は自己施肥系であり,更新時の林地残材の持ち去りは林地の養分環境を悪化させ,植栽苗の成長に影響を与える可能性が考えられる。そこで本研究は,ヒノキ伐採跡のヒノキ造林地に,林地残材を取り去った試験区(除去区)と散布した試験区(散布区)を設定し,土壌水の養分と苗木の成長を測定した。宮崎大学田野フィールド(演習林)内の植栽直後のヒノキ造林地において各16本ずつの3年生苗を試験対象とした。植栽後2年目の苗長は除去区の方が有意に高く,1年目と2年目の成長率も除去区が有意に大きかった。テンションフリーライシメーターで降水ごとに採取したA0層通過水の溶存成分濃度は,有機炭素濃度は散布区の方が高い値で推移し,全窒素濃度は逆に除去区の方が高い値で推移した。カルシウムイオンと硝酸イオンの濃度も同様に除去区の方が高かった。一方,カリウムイオンとリン濃度は両区で違いが認められなかった。散布区では林地残材由来の炭素の供給が増えたことにより,いわゆる窒素飢餓,すなわち微生物による窒素の不動化が卓越したと考えられる。