【目的】千葉県房総丘陵のヒメコマツは寒冷期の遺存植物として大変貴重であるが近年急激に個体数が減少し、千葉県では平成22年に最重要保護生物に指定し「生物多様性ちば県戦略」を策定し保護している。主たる減少要因のひとつとしてマツ材線虫病が考えられることから、天然成木で残存している個体はマツ材線虫病抵抗性が高い可能性がある。そこで、天然成木由来の実生苗にマツノザイセンチュウを接種しマツ材線虫病抵抗性を検証した。【方法】自然交配苗3家系(集団内個体由来2家系、孤立木由来1家系)および人工交配自殖苗1家系に強病原性マツノザイセンチュウ(Ka-4株)5,000頭/本を2011年7月下旬と2012年8月上旬に連年接種し、接種年の10月に枯損調査をした。【結果】自然交配苗の累積生存率は75,50,25%でありその内孤立木由来家系の生存率が最も低く人工交配自殖苗と同程度であった。房総のヒメコマツ個体群は互いに離れて生育しているため花粉流動が低く自殖が多いことが明らかになっている。今回の接種試験の結果孤立木由来の実生苗の生存率が低かったことから小集団化による自殖が材線虫抵抗性を低下させることが示唆された。