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第124回日本森林学会大会
セッションID: C19
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四国南西部における落葉広葉樹天然林のニホンジカ摂食剥皮害による衰退
*奥村 栄朗酒井 敦奥田 史郎
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抄録

四国の森林は人工林率が高く、原生状態に近い天然林は僅かしか残存しない。この中で三本杭(1226m)周辺にはブナ林を含む落葉広葉樹天然林が約800ha残され、四国南西部での重要な保全対象である。ここで近年ニホンジカの増加による森林被害が問題となってきたため、2006年から摂食剥皮害の状況を継続調査してきた。
山頂周辺に調査プロットを6ヶ所(計0.62ha)設定し、毎年全生立木(DBH≥3cm)について樹種、胸高直径、摂食剥皮痕及び枯死木の発生状況を記録した。
調査開始時,林床植生はほぼ消滅しており、不嗜好樹種以外はすでに高頻度で被害を受けていて、全調査木(1809本)の32%、最優占種コハウチワカエデの55%、リョウブなどの嗜好性樹種では95%以上に被害痕があった。新規被害は大部分が夏季に発生し、嗜好性樹種では同じ立木が繰り返し加害されていた。全期間・樹種合計での枯死率は10%を超え、枯死木の3分の2、嗜好性樹種ではほぼ総てが被害木であった。
以上から、この落葉広葉樹天然林のシカによる衰退の実態が明らかとなった。なお、この研究の一部は四国森林管理局の調査事業委託により行った。

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