抄録
【目的】ブナ科樹木の萎凋病菌Raffaelea quercivoraの材内における菌糸伸展は,樹種間で差異があると示唆された.その差異には,樹種間における組織構造の違いが関与すると考えられてきた.そこで本研究では,辺材部の組織構造がR. quercivora菌糸の伸展に与える影響を明らかにすることを目的とした.【方法】ミズナラ,コナラ,アラカシ,スダジイの各苗木から,γ線で滅菌した材片を作成した.その後,各材片の一か所に本菌の接種を行い,横断面において接種点から接線方向に最も遠い位置で観察された菌糸までを,菌糸の伸展距離として測定した.さらに,道管,放射組織,壁孔の大きさと密度の計測を行った.【結果】ほとんどの材片において,菌糸は放射組織周辺を接線方向に伸長し,道管や木繊維内においても観察された.樹種間における菌糸の伸展距離には有意差は認められなかった.道管,放射組織,壁孔の大きさと密度の測定結果も合わせて,組織構造が菌糸の伸展に与える影響を考察する.