抄録
ハナノキはカエデ科の日本固有種で,愛知,岐阜および長野県の湧水湿地に自生している.分布域が極めて狭く,個体数も減少していることから環境省レッドリストでは,絶滅危惧Ⅱ類に指定されている.2005年5月から6月頃に、ハナノキの幼苗から成木のいずれのステージにおいても葉に褐色の円斑を呈し,個体を衰弱させ,幼苗においては枯死に至る病害が自生地および植栽地において集団で観察された.病斑は,はじめ小黒点,後に褐色で円形,径約5mmに拡大し,健全部との境界は暗褐色から黒色で明瞭となった.病斑内部に黒点状の分生子殻を形成し、そこから単胞子分離菌株を得た.これを用いて接種試験を行ったところ,約1ヶ月後に病徴を再現し,病斑からは接種菌が分離され,病原性が確認された.続いて,本菌の種同定を行った結果,形態的特徴から北米にてやはりカエデ科植物に寄生するPhyllosticta minima (Berk. & M.A. Curtis) Underw. & Earleと同定した.本種は日本においては初記録であることから,本菌によるハナノキの病害を褐色円斑病(英名:Leaf spot)とすることを提案する.