抄録
イチジク株枯病の病原菌Ceratocystis ficicolaは,土壌感染のほか穿孔性甲虫アイノキクイムシEuwallacea interjectusによって媒介される可能性が指摘されている。本研究では,自然感染木内でのアイノキクイムシの挙動,病原菌の分布,宿主の反応について解剖学的検討を行い,株枯病における本種の関与について考察を行った。萎凋開始直後のイチジク個体の横断面を観察したところ,樹幹下部の木部が7割以上変色しており,水分通導阻害による水不足で萎凋し始めたものと推測された。木部の変色部には本甲虫の孔道と病原菌の分布が確認された。変色部から未変色部へと伸長中の孔道からは,本甲虫の雌成虫,菌糸,宿主細胞による二次代謝物質の生成・放出が観察された。これらの現象はRaffaelea quercivoraによるナラ枯れの進展過程と同様であった。以上の結果から,本甲虫の孔道形成は病原菌の樹幹内分布と木部の変色を加速させ,株枯病の病徴進展を促進すると考えられた。