抄録
【はじめに】アコウ(Ficus superba var. japonica)は、マレー半島から西南日本まで自然分布するクワ科イチジク属の樹木である。アコウは、「絞め殺し植物」として宿主に着生するとともに、イチジクコバチと送粉共生システムを確立している特異的な生態的特性を有する。本報告では最北限域にあたる四国集団において、創始化効果が生じているかどうか検証することを目的に遺伝的特性を解析した。【調査地および調査方法】調査対象地は「足摺岬」および「室戸岬」の2集団とした。解析は、比較のため琉球列島および九州本土の集団も含めて21集団、サンプル数は1集団あたり11~86個体で合計676個体とした。各個体の遺伝子型は、16座の核マイクロサテライトマーカーを用いて決定し、各集団における遺伝的多様性の評価および遺伝構造を解析した。【結果および考察】四国集団は九州本土集団と遺伝的に近かったが、遺伝的多様性は他集団より低い傾向であり、特に室戸岬で顕著に低かった。また開花結実フェノロジーの観察結果と合わせると、アコウの北限集団では、創始者効果が生じている可能性があると推察された。