モンゴルでは、Larix sibiricaが草原と移行帯を形成する。本研究は、テレルジ国立公園のLarix林の構造を明らかにすることを目的とする。森林と草原の移行域の3ケ所、連続した森林内の1ケ所を調査地とし、移行域では草原から森林にかけてトランセクトを設置した。移行域の3ケ所は、いずれも南向き斜面が草原で、北向き斜面が森林であり、連続した森林も斜面方位は北向きであった。調査項目は、毎木調査、実生調査、全天写真の撮影、土壌水分測定とした。移行域では、森林と草原の境界は明瞭であり、草原内に生育するLarixは大型の個体に限られた。また、森林側のLarixは、高密度であり、枯死立木も多かった。実生については、森林内には高い密度で存在したが、草原内にはみられなかった。このことは、南向きの草原では実生の定着が困難なことを示している。一方、連続した森林では、移行域の森林と異なり、Larixだけではなく、Pinus sibiricaが多く、その稚樹もみられた。Pinusが連続した森林で出現した原因としては、森林自体の規模が大きく、種の供給源が残存し易かったことが関係している可能性がある。