日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: P1B021
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小笠原乾性低木林における木部キャビテーション耐性の比較
*白井 誠才木 真太朗石田 厚丸山 温
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抄録

小笠原諸島は、似た緯度にある沖縄と比べおよそ半分ほどの年降水量しかなく、また海底火山が隆起してできた島のため地質は溶岩性で、特に尾根部では土壌が非常に浅くなる。小笠原の父島では、湿った谷筋から乾燥する尾根部にかけて立地環境傾度が著しく大きく、微地形に応じた樹種の分布は環境耐性への適応に左右されていると考えられる。海岸性樹種であるオオハマボウは、小笠原の山地の乾燥環境に適応することで、固有種テリハハマボウという種に進化・発現したことがわかっている。本研究では、オオハマボウとそこから進化してきた近縁種テリハハマボウを対象に、木部の解剖学的構造や水分通導機能、葉のしおれにくさ(P-V特性)などから環境耐性を比較し、乾燥適応への進化の仕方がどのようになっていたかを検討した。枝の木部キャビテーション(水切れ)耐性は、オオハマボウとテリハハマボウの間に有意差が無かった。枝の通水性は、テリハハマボウでより高い傾向が見られ、葉のP-V特性は、両種で類似していた。このことから、テリハハマボウは、オオハマボウより枝の通水性を上げることによって、小笠原の乾燥環境に適応していったことが示唆された。

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