抄録
福島第一原子力発電所事故による山菜への影響を評価することを目的に,山菜種の潜在生育地と高空間線量率域の重なりの程度を調べた。調査は福島県中通りの二本松市東和地区で行った。対象地の植生を把握することを目的に,1/5000縮尺の植生図の作成と植生調査を102地点で行った。植生タイプごとの出現種の常在度階級値を用いてDCAによる序列化を行った。また128地点で対象とした山菜15種の在・不在と,エアカウンターを使用した地上1m高の空間線量率を記録した。そして山菜の在不在を目的変数にしたロジスティック回帰分析と,空間線量率を目的変数にした重回帰分析を行った。説明変数は標高,傾斜角度,斜面方位,TPI,道脇か否か,植生データを使用し,AIC基準でベストモデルを決定した。植生データには植生図凡例を使用した場合とDCA第1~3軸のスコアを使用した場合で予測精度の比較を行った。その結果,空間線量率は高標高の南東側斜面と北側斜面の谷部で高くなった。山菜は4種について高い精度のモデルが得られ,高標高の尾根部と5つの森林タイプで在となったコシアブラは高空間線量率域との重なりが大きく,尾根部の道脇と草地で在となったワラビは重なりが小さかった。