樹冠投影図を描いたり、個体の枝張りを測定したりする際に、航空写真法や林内での目測などの方法が用いられてきた。しかし、これらの方法の測定精度は10cm程度であり、森林内で枝先の鉛直下を正確に特定することは難しい。そこで、林内で枝先の鉛直下を決定するための樹冠測定具「天望鏡(てんぼうきょう)」を開発した。天望鏡は、円筒と糸で構成した十字線、おもり、手鏡、赤白ポールで構成される測定具で、おもりを利用して、枝先の鉛直下を決定する測定具である。天望鏡の測定精度を検証するために、建物の2階から5階に設置された渡り廊下を利用して上空に目標を設置し、上空では壁から目標まで、地上では壁から天望鏡を利用して決定した目標の鉛直下までの距離を同時に測定した。4.07m、8.30m、12.50m、16.70mの高さでの測定値と地上での計測値を比較したところ、測定精度は高さが高くなるにつれて1.1cmから2.9cmと下がる傾向があり、正確度は4.2cmから0.4cmと上がる傾向があった。以上の結果から、天望鏡を用いればこれまでの方法より正確に枝先の鉛直下を決定できることが明らかとなった。