日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: D08
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造林部門
琵琶湖湖西の低標高域で観察されたヒノキ天然生林の成立経過について
*大住 克博
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抄録

琵琶湖西岸で観察されるヒノキ天然生林は、かつて近畿地方低山域に多く生育していたと考えられる同種が、現在でも分布の潜在的可能性を持っている証左として注目される。そのような林分の構造と成長過程を調査した。対象林分は一斉人工林と見分けがつかないが、所有者から天然生林であるという証言を得ている。調査区の生立木(dbh>3cm)は約1800本/ha、胸高断面積合計は57㎡/haであった。ヒノキはそれぞれの73%、99%を占めた。調査区内には伐り株や小径の枯立木が多数存在した。ヒノキの隣接同種個体までの距離は、枯立木や伐り株を含めるとほぼランダム分布となり、ごく短い場合も多いことから、更新が植栽に依らないことが示唆された。一方生立木のみでは、規則分布に近づいていた。間伐により個体間距離が調節されたためであろう。伐り株により年輪を解析したところ、概ね70年生前後であり、戦時期に更新したことが読み取れた。また多くは中心部の年輪が極めて密で、初期に成長が停滞したことが認められたが、これは初期にはアカマツが優占していたという所有者の証言に合致した。以上の結果は、当地域で人工林に類似したヒノキ天然生林が成立し得たことを示している。

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