日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: E01
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遺伝・育種部門
植栽ブナにおける更新第一世代で獲得される遺伝的多様性について
*菊池 葉香並川 寛司北村 系子
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抄録

 一般的に、分布限界における集団の遺伝的多様性は低いことが予想される。日本におけるブナの自生地北限は北海道南部の黒松内低地帯付近にあるが、北海道におけるブナの遺伝的多様性を本州の集団と比較したところ、多様性は比較的高く保たれていた。そこで本研究では、北限域のブナが北進過程においてどのように遺伝的多様性を獲得しているのかを明らかにするための調査を行なった。札幌近郊の野幌林業試験場樹木園跡に42m×80mのトランセクトを設定し、植栽されたブナ6本および当年実生を含む更新稚樹265本について、核マイクロサテライト12遺伝子座を用い遺伝的多様性を評価した。その結果、対立遺伝子数は植栽された母樹で60、稚樹165、当年性実生91で、高い外交配性が確認された。他方、平均ヘテロ接合体率は母樹が0.707、稚樹0.631、当年性実生0.684、アレリックリッチネスは母樹が5.00、稚樹4.06、当年性実生4.11と、いずれも一世代更新によって獲得された遺伝的多様性の程度はそれほど高くないことが明らかとなった。このことは、北限域におけるブナの遺伝的多様性の高さが、比較的多くの世代数を経たことにより形成されたことを示唆している。

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