日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: E03
会議情報

遺伝・育種部門
モミ属3種における浸透交雑の検証
*内山 憲太郎藤井 沙耶花津山 幾太郎鈴木 節子森口 喜成木村 恵津村 義彦
著者情報
キーワード: 浸透交雑, モミ, 細胞質捕獲
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 浸透交雑は集団に急速な遺伝的変異をもたらすことから、その進化的意義は大きい。本研究の対象であるモミ属3種(シラビソ、ウラジロモミ、モミ)は、標高に沿ってゆるやかに分布を分けているが、分布が重なる地域では交雑個体も確認されている。核マイクロサテライト19座を用いたadmixture解析では、3種間の遺伝的混合はほとんど認められず、現在の種間の遺伝的交流は限られていると考えられた。一方で、mtDNAの5領域のシークエンスからは、種を越えたハプロタイプの共有が認められた。特に、モミの太平洋側の北端5集団は、シラビソ、ウラジロモミの主要ハプロタイプに、ウラジロモミの南端の2集団はモミの主要ハプロタイプにそれぞれ置き換わっており、地理的なまとまりが認められ、過去にこれらの種間での浸透交雑が起きた可能性が示唆された。過去の気候変動に伴う分布の変化は、種間の新たな接触と隔離の機会を生み出してきたと考えられる。近縁種との交雑が活発に生じた際に、交雑を介して互いの有益な遺伝情報を獲得してきたかもしれない。本報告では、3種の過去の分布予測と遺伝解析から、これら3種の浸透交雑の歴史について考察を行う。

著者関連情報
© 2015 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top