日本で最も親しまれている桜の品種ソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンとの雑種であると言われている。ソメイヨシノを種子親としてエドヒガン3個体(E750, IJR1, IJR2)を掛け合わせたところ、3つの家系全てで半数にのぼる実生に生育不全が観察された。本研究ではこの生育不全に関与する遺伝子座のマッピングを試みた。両親および健全な実生と生育不全の実生178個体を用いた連鎖解析により、77のマーカーが座乗する8連鎖群からなる533.7 cMのFemale mapおよび、17のSSRからなる196.8 cMのMale mapが構築された。作成した連鎖地図をもとに生育不全との関連を探索したところ(マーカー分離比の歪み、関連解析、QTL mapping)、Female mapの第4連鎖群(LG4)において強い関連がみられた。一方、Male mapのLG4には有意な関連は見られなかった。このことからエドヒガン種内の近交弱勢ではなく、種間の不和合により生育不全が引き起こされると予想された。現在、3家系の実生384個体におけるLG4の分析により、生育不全に関与する遺伝子座を2つのSSRに挟まれた3.8 cMの領域に同定している。