日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: E06
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遺伝・育種部門
高標高トドマツの早熟性はどのように遺伝するのか?
*久本 洋子後藤 晋
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抄録

 一般に樹木の繁殖開始は個体サイズに依存するが、高標高の厳しい環境ではサイズが小さくても早期に繁殖を開始することが知られている。しかしこれまで早熟性が次世代に遺伝するかは不明であった。本研究は、東京大学北海道演習林で実施された低標高(530m)と高標高(1100-1200m)の自生個体の相互交雑試験地において、4交配タイプ(高標高由来母樹×高標高由来花粉親(高×高)、以下同様に高×低、低×高、低×低)の計21個体について2011~2014年に高所作業車を用いて全球果数を計数するとともに、樹高と胸高直径を測定し、統計モデルを用いて交配個体の結実量が高標高ゲノム割合と個体サイズで説明できるかを調べた。
 豊作年であった2011年と2014年で結実数は低×高、低×低、高×低、高×高の順に多かった。統計モデルの結果、個体サイズが大きいほど、また、高標高ゲノム割合が高いほど結実量が多くなり、早熟性が遺伝することが示された。しかし、個体サイズ、高標高ゲノム割合ともにほとんど差が無い高×低と低×高の結実数が有意に異なっており、種子形成時の環境というエピジェネティックな効果が加わっている可能性が示唆された。

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© 2015 日本森林学会
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