福島第一原発事故で放出された放射性セシウム(Cs)は、3年が過ぎてその大半が森林土壌に移行したと考えられるが、その後の森林土壌内におけるCsの挙動、特に樹木根のCsの吸収については量や経路など多くの点が未だ不明である。そこで本研究はこれまで細根生産量、分解量の測定のための手法だったイングロースコア法を用いて樹木根におけるCs吸収を把握する方法を考案し、その有効性について検討した。
実験は福島県伊達市のスギ人工林で行った。現地のCsを含む土壌(+Cs)と、京都のスギ林のCsを含まない土壌(-Cs)を詰めた長さ20cmのイングロースコアを10本ずつ準備し、2013年6月に試験地に埋設した。1年後の2014年6月にコアを回収し、土表表層から0-3cm、3-10cm、10-20cmの3深度に分けて土壌と新規に伸びた根系を分別した。+Csのコア内にあった土壌の平均Cs濃度は4232±2807Bq/kgと、-Csの土壌中の平均Cs濃度1446±1217Bq/kgの約3倍も高く、この手法により根系の土壌環境を制御することが出来たと判断された。また植物根中の平均Cs量についても、+Csで1331±574Bq/kg、-Csで423.2±235Bq/kgと土壌と同じく約3倍であり、根系は土壌からCsを吸収すると予想された。