マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)は日本および東アジア(中国、台湾、韓国)で甚大な被害を及ぼしている森林病害である。近年のヨーロッパ(ポルトガル、スペイン)への侵入に伴い、本病原への注目がさらに高まっている。2011年にマツノザイセンチュウ全ゲノムの解読が発表されたことから、ゲノム情報を利用した研究が可能となり、多方面でゲノムワイドな研究が展開され始めた。我々は日本における主要な線虫株のリシーケンシングにより、ポピュレーションレベルでのゲノム多様性を明らかにし、各線虫株の進化的関係や病原力などの表現型に関与するゲノム領域の特定を試みた。また、RNAseq解析により、各発育ステージでの遺伝子発現やホストへの侵入時の遺伝子発現の変化を解析し、多様な遺伝子が病気の発現に関与していることを明らかにした。さらに、ニセマツノザイセンチュウを含む他のBursaphelenchus属線虫との比較ゲノムにより、マツノザイセンチュウゲノムの特徴やホスト特異性を明らかにする研究も進行中である。