日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: T16-03
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T16. 最新の森林系統地理学と将来展望
オンツツジの島間分化はどのように形成されたのか-第四紀の個体群動態を推定する-
*渡辺 洋一玉木 一郎阪口 翔太Song Jong-Suk山本 進一戸丸 信弘
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抄録

東アジア辺縁部に存在する島間の地理的な連続性は、第四紀に繰り返した気候変動に伴う海水準変動により変化してきた。氷期には地理的に連続していた島々では、植物は陸化した海峡を通り移住、もしくは陸化した地域が分布に適した生育地でない場合、それぞれの島集団の隔離は維持されたと考えられる。大陸島に分布する植物の詳細な歴史を明らかにするため、本発表では東アジアの大陸島(本州紀伊半島・四国・九州・済州島と付随する島々)に分布するオンツツジを対象に、葉緑体(1,012 bp)と核(3,928 bp)の塩基配列に基づく遺伝解析を行った。結果、島集団の間で最も遺伝的分化が高いのは四国・九州集団間で、その分化は葉緑体・核両方の領域で支持された。コアレセントモデルによる分岐年代推定は、この2地域間の分化が最終氷期以前に成立していたことを示唆しており、最終氷期に陸化した豊後水道は集団の移住に効果的ではなかった可能性が示唆された。一方で済州島と九州の間に存在する五島列島集団は両島の系統が混合したような遺伝的構造を示しており、この3地域間では飛び石状に移住していた可能性が示唆された。

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