日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: T16-04
会議情報

T16. 最新の森林系統地理学と将来展望
ニホンノウサギとアカネズミにおける遺伝的集団構造と形態学的特徴の不一致
*布目 三夫友澤 森彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ニホンノウサギ(Lepus brachyurus)とアカネズミ(Apodemus speciosus)はどちらも日本固有の哺乳類である。日本各地の森とその周辺の草地に住むが、夜行性のためあまり人目にはつかない。生物地理学的な特徴として彼らに共通する点は、本州の中央あたりで南北あるいは東西2つの集団に分けられることである。ニホンノウサギは冬毛の色に2つのタイプがあり、本州日本海側の積雪地帯に生息するノウサギは褐色の夏毛から白色の冬毛へと毎年毛替わりするが、太平洋側の非積雪地帯のノウサギは夏も冬も毛色は褐色のままである。アカネズミは核型に2つのタイプがあり、中部地方を境に2n = 46の西方タイプと2n = 48の東方タイプに分けられる。氷期に複数の避寒地に集団が分かれたことが、これらの二型の発端と考えられるが、ミトコンドリアおよび核DNAには2つの集団の明瞭な遺伝的分化はみられなかった。ニホンノウサギの季節的な毛色二型は日本列島の気候の多様性によって維持されている一方で、アカネズミの核型二型は環境適応に関わらないものであるがゆえに、どちらも淘汰されることなく維持されているものと思われる。

著者関連情報
© 2015 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top