森林教育という行為、アクションには様々なものがイメージされる。たとえば、環境教育の一部門、海や山岳や草地などと並ぶ自然環境の一つのバリエーションとしての森林。その捉え方であれば、森林とは教育を行うために取り上げられる(たくさんあるなかのひとつの)素材である。あるいは、森林・林業関係者が展開する森林教育の意図する森林。それは、都市住民の「無理解」という脅威から防衛すべき対象である。どちらの視点に立っても、森林のダイナミズムと人間の成長との直接的な影響の及ぼし合い、インターアクションは、あまり前景に出てこない。かたや森林が他の自然環境に置き換えることのできない独自性を持ち、かたや人間が(体重や身長の増大ではなく)人格の成長を目指して教育を行う以上、森林が人を育てることの意義は、実践例が蓄積されてきた今、整理される必要がある。その一つの試みとして、ドイツで展開されている森林教育の資格、Zertifikat Waldpadagogikの研修に用いられている教科書を取り上げ、その中で森林や教育、さらにはESDの概念がどのように整理されているかを見ることで、理論を実践につなぐあり方を探る。