2013年に富士山が世界文化遺産に登録され、今後、登山者数増加による富士山の過剰利用が予想される。富士山における過剰利用は、登山者の快適な利用体験を妨げるだけでなく、景観や自然環境に対しても悪影響を及ぼしかねない。そこで、本研究では、富士山の過剰利用対策として、登山者数に合わせた登山者への対応、トイレ対策、ゴミ対策、管理に対する費用負担として登山者に対する環境保全協力金の徴収を想定し、選択型実験を用いて過剰利用対策に対する登山者の潜在需要を把握した。その結果、第一に条件付ロジットを用いた分析から、登山者にとって環境保全協力金の徴収と登山者数増加は望ましくないものであると考えられ、また、年齢や所得の違いによる、それぞれの対策に対する選好の違いがみられた。第二に混合ロジットを用いた分析から、環境保全協力金の徴収を除いた対策に関して登山者の選好の多様性が存在することが明らかになった。これらの結果から、過剰利用対策の登山者の選好を把握することが出来たが、モデルの精緻化、外国人旅行者がサンプルに含まれていない等の問題点を改善することが今後の課題としてあげられる。