本研究では、常緑針葉樹モミ(Abies firma)樹体内の放射性物質の蓄積と針葉の成長量との関連性を解明することを目的とし、樹体内での放射性物質蓄積の偏在性およびその傾向について解析した。調査は、2014年11月下旬に福島県北部(飯舘村、相馬市、南相馬市)に位置する針広混交林内で行った。針葉は、各個体の上部(主軸先端部付近)および下層部から枝ごと採取した。採取した枝は当年葉と1年葉に分類し、枝の長さを測定した。その後、枝から針葉を切り離し、針葉の厚さ・重さ及び葉面積を測定した。計測を終えた針葉は、65℃で乾燥させ粉砕した後、ゲルマニウム半導体検出器を用いて放射性セシウム濃度を測定した。その結果、当年葉の放射性セシウム濃度は、着葉位置に関係なく1年葉より高かった。また、同齢の針葉であっても、着葉していた位置(高さ)によって放射性セシウム濃度に差が認められ、上部に着葉していた当年葉の方が下層部の当年葉より高かった。本発表ではさらに、これら放射性セシウムの樹体内における偏在の原因を、針葉の葉群動態の視点から考察する。