自然界での樹木の生育は多様な菌類との共生関係の上に成り立っている。特に高山の過酷な環境下ではその重要度が増すと考えられる。研究対象としたハイマツは風衡地を主な更新の場としており、実生定着には菌類との共生系の構築が不可欠である。本研究では、ハイマツの実生定着に関わる共生菌群集を明らかにすることを目的とした。乗鞍岳において、ハイマツおよび同所的に生育するツツジ類5種の菌根を含む土壌コアを採取し、DNA解析により外生菌根菌および両樹種に共通して出現するビョウタケ目菌の群集構造を調べた。ハイマツからは57種の外生菌根菌種が検出され、特に実生菌根ではRhizopogon、Suillusなどの遷移初期種およびSebacinaが優占し、個体成長に伴う菌根菌群集の変化が見られた。ツツジ類からは61種のビョウタケ目菌が単離され、宿主間およびハイマツ林内・林縁・林外の間で異なる群集構造が見られた。ハイマツ菌根から選択的にビョウタケ目菌を検出し、ツツジ類での出現菌種との比較を行ったところ、ハイマツとツツジ類の間では異なるビョウタケ目菌種の選択性および共生パターンが認められ、中でも特定のビョウタケ目菌でハイマツとの強い関連が示唆された。