抄録
本研究の目的は,小学校で使用されている教科書に掲載されている樹種名および森林・林業に関する用語の出現頻度と取り扱われ方の分析から,児童への影響を論じることである。教科書に掲載されている樹種名および森林・林業に関する用語の出現頻度を把握するために,全国で使用されている文部科学省検定教科書の全学年全教科を対象に,語句の抽出と集計を行った。その結果,どの教科に関してもサクラ,リンゴ,カキ等といった身近な樹種や果樹が多いことが明らかとなった。社会も国語同様に,樹種に関する用語は果樹に関する用語が上位を占めており,都道府県の生産量を示す欄で多く取り扱われていた。生活においては,ドングリという用語が最も多く,ドングリのなるクヌギ,コナラ,マテバシイ,スダジイ等が上位に位置していた。その一方で,社会の5年生で唯一森林に関する単元があり,森林・林業に関する用語が扱われていた。よって,教科書に載っている樹種は,私たちの生活の中で目にすることができるものを中心に取り入れられているため,児童の生活と連結して考えることを目的にしていると考えられる。