抄録
高校生を対象とした森林環境教育について、安藤(2012)は学校外教育「聞き書き甲子園」を事例にその社会的意義と効果を明らかにした。一方、学校教育において山下(2013)は「総合的な学習の時間」に限ることなく、教科・領域においても重要であることを示しているが、井上・大石(2014)は教科の位置づけがない以上、その実践は困難な面があるとした。そこで、本発表では教科・領域を超えた時間割外科目において森林環境教育を内包する実践を行う、筑波大学附属坂戸高等学校を取り上げ、その実態と同科目における森林環境教育の効果から、その役割を考察した。同校は総合学科であり、ユネスコスクール指定や国内外でのフィールドワーク実施など先進的事例としてあげられる。森林環境教育を内包する科目として、自然科学分野「総合地球科学入門」と社会科学分野「国際フィールドワーク入門」の2科目を抽出し、参与観察、履修生徒へのアンケート、生徒の実習記録から検討した。結果、同学年および異学年の生徒間および生徒―教員間の良好な人間関係構築、普段の授業内容の補完的役割、活動の場の広がりを与えるなどの役割を果たすことが示された。