主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第128回日本森林学会大会
回次: 128
開催地: 鹿児島県鹿児島市(主に鹿児島大学郡元キャンパス)
開催日: 2017/03/26 - 2017/03/29
本研究では、ランプン州のワイ・カンバス国立公園(WKNP)のゾウによる獣害を扱う。WKNP設立の1982年以降、周辺地域ではゾウによる農地の踏み荒らし等が頻発しており、人々はゾウ被害は大きな問題であるとしがらも、現地での暮らしの継続を望んでいる。本発表では、こうした状況下での住民による被害対策の実態を明らかにする。本稿の調査対象村では、個人による対策と、住民グループ(PG)による対策が存在した。特に、PGによる対策では、①専門家や行政の関与が緩やかであること、②活動内容は各PGに任され、楽しみを見出す余地のある対策となっていること、③PGという枠組みの存在が外部支援の受け入れや他PGとの交流を容易にし、対策手法の試行錯誤が促進されていること、が示唆され、順応的ガバナンスや試行錯誤の保証が一部取り入れられながら定着しつつあるといえる。対策の実態から、村人らはゾウ被害を自分たちが対処すべき問題として捉え、自ら思考・実践し、外部から独立して活動していることが示唆された。特にPGメンバーらはゾウに対し好意的な認識を持つ傾向にあり、今後のゾウとの関係性において重要なアクターになりうるだろう。