主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第128回日本森林学会大会
回次: 128
開催地: 鹿児島県鹿児島市(主に鹿児島大学郡元キャンパス)
開催日: 2017/03/26 - 2017/03/29
現在,ニホンジカによる森林の下層植生の衰退が日本各地で報告されている。下層植生の衰退によって,生物多様性が低下するだけでなく,渓流への窒素流出に影響が及ぶ可能性が考えられる。本研究では,2006年に全周を防鹿柵で囲った集水域と,隣接する対照集水域を用いて,下層植生の窒素吸収量と,平水時・降雨出水時の渓流水中の硝酸態(NO3-)窒素濃度と同位体比を比較し,下層植生の衰退が平水時・降雨出水時の窒素流出に与える影響を明らかにすることを目的とした。防鹿柵内では,平水時のNO3-濃度が年々低下する傾向を示し,下層植生の窒素吸収の回復が寄与しているものと考えられた。降雨出水時のNO3-流出パターンについて防鹿柵内外の濃度差をみると,季節によって異なる応答を示し,防鹿柵内では植物成長期に窒素流出が抑制されることが分かった。NO3-の窒素・酸素安定同位体比は,平水時,降雨時とも両集水域間で有意な差が認められなかった。以上から,下層植生の衰退は渓流水へのNO3-流出の増加を招き,そのソースは下層植生に吸収されず余剰となった土壌由来のNO3-であり,降雨時であっても降雨由来のNO3-の直接流出率にはほとんど影響しないことが分かった。