主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第129回日本森林学会大会
回次: 129
開催地: 高知県高知市(主に高知大学朝倉キャンパス; 3/26は高知県立県民文化ホール)
開催日: 2018/03/26 - 2018/03/29
近年,管理が不十分な針葉樹人工林を広葉樹林に誘導して森林の公益的機能の向上を図ろうとする動きがある。一方で,この誘導が森林の物質循環にどのような変化をもたらすのかについては十分にはわかっていない。本研究ではこの変化を理解するための手始めとして,森林の物質循環において重要な役割を担う溶存有機物(DOM)に着目し,針葉樹林と広葉樹林における雨水中DOMの質を比較・検討することを目的とした。兵庫県内の針葉樹林(ヒノキ林)と広葉樹林(コナラ林)で林外雨と林内雨を採取し,超高分解能質量分析法であるFT-ICR MSを用いて林外雨と林内雨のDOMを構成する分子の種類と数を分析した。その結果,DOMの構成分子の種数は林内雨のほうが林外雨よりも有意に多い(p < 0.05)一方で,針葉樹林内雨と広葉樹林内雨との間では有意な差がないことがわかった。また,林外雨と林内雨との間で構成分子種に類似性は見られなかったが,針葉樹林内雨と広葉樹林内雨との間では多くの構成分子種が共通していた。これらの結果は,多様なDOMが樹冠から雨水へ供給される一方で,供給されるDOMの種類については針葉樹林と広葉樹林で大きな差異はないことを示唆する。