近年、全国的にニホンヤマビル(以下、ヤマビル)の吸血被害が増加しており、ニホンジカ(以下、シカ)などの大型哺乳類の増加・分布拡大との関連性が示唆されている。本研究では、シカの分布する地域としない地域によってヤマビルの宿主動物に違いがあるのか明らかにすることを目的とした。全国10県から採集したヤマビルを解剖し、消化管に残る宿主動物の血液塊から全DNAを抽出し、ミトコンドリアDNAの16S rRNA領域の塩基配列を決定した。そして、塩基配列情報のデータベースと照合して宿主動物を同定した。ヒトと同定された試料は解析から除いた。その結果、1匹のヤマビルから複数の宿主動物が同定されることはなく、56匹のヤマビルの宿主動物を同定できた。56匹のうち、シカの分布する地域で採集した24匹の宿主動物はシカと同定された。一方、シカの分布が未確認である秋田県の低標高地域における宿主動物はカエル類4種およびホンドタヌキであった。また、標高的にシカの分布していないと考えられる群馬県中之条町の高標高地域の宿主動物はニホンカモシカが最も多かった。シカの分布の有無によってヤマビルの宿主動物に差異があることが示唆された。