主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第129回日本森林学会大会
回次: 129
開催地: 高知県高知市(主に高知大学朝倉キャンパス; 3/26は高知県立県民文化ホール)
開催日: 2018/03/26 - 2018/03/29
鉱物風化起源のリン(P)可給性が低下しP欠乏度が上昇する程、森林生物(樹木・微生物)のP獲得は土壌有機態P(Po)に強く依存すると考えられている。本研究では、キナバル山のP欠乏度の異なる9つの森林において、地上部リター・細根・微生物炭素(C)の土壌への年間供給量、各要素のC/PおよびPo/全P(Pt)をもとにP循環モデルを構築し、本仮説を検証した。まず、全森林において土壌に供給されるPの大部分が微生物Pのターンオーバーに由来することが示されたが、これは微生物C/Pが植物C/Pに比べて著しく低いことに起因した。生物のPo依存度は、生物に獲得されるPt(Ptup)に対するPo獲得(Poup)の割合(Poup/Ptup)として表すことができる。動的平衡状態を仮定した場合、Poup/Ptupは土壌に供給されるPo(Posup)のPt供給(Ptsup)に対する割合(Posup/Ptsup)と一致すると考えられるので、土壌への主要なP供給源である微生物体のPo/Ptが生物のPo依存度の決定要因となりうる。微生物のPo/PtはP欠乏の森林ほど低い傾向があった。つまり、P欠乏の森林で土壌に供給されるPosup/Ptsupが低く、それゆえ仮説とは異なり生物のPo依存度Poup/PtupはP欠乏の森林で小さい可能性がある。