日本森林学会大会発表データベース
第129回日本森林学会大会
セッションID: P2-232
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学術講演集原稿
ニホンジカによるウバメガシ萌芽の食害
*法眼 利幸山下 由美子
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抄録

 和歌山県では備長炭原木のウバメガシは萌芽更新により循環利用されてきたが、ニホンジカの萌芽枝の食害により更新が困難な事例が見られ始めている。その実態を把握するため、シカの行動および伐採株の生存状況と萌芽枝の成長を調査した。シカの出現および行動について、ウバメガシ伐採地においてトレイルカメラで観察を実施した。すさみ町では2016年8月~2017年9月に634件撮影され、うち55.2%が植生に対する採食行動であった。田辺市では2016年9月~2017年7月に156件撮影され、うち23.7%が植生に対する採食行動であった。以上から、すさみ町のウバメガシ伐採地の方が、シカにとって重要なエサ場となっていると考えられた。串本町のウバメガシ伐採地において、シカ食害防護資材の処理区(27株)と無処理区(44株)を設け、伐採1年後および5年後の伐採株の枯死率と、5年後の生存株の最大萌芽枝高を比較した。枯死率は、処理区で1年後7.4%から5年後51.9%、無処理区で43.2%から84.1%と増加した。5年後の最大萌芽枝高は、処理区で平均104.7㎝、無処理区で18.0㎝であった。以上からシカによる萌芽枝の食害が伐採株の生死に影響していると考えられた。

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