ブナ樹冠内の様々な位置で調べた個葉の光合成能力(Pnmax)や窒素含有量(Na)、比葉面積(LMA)は、葉の生育光環境に強く依存する。樹冠最上部の枝内の葉は、一般的に全て陽葉として扱われるが、実際には葉角度の違いや隣接葉による被陰で、個々の葉の光環境には樹冠内と同じようなバラツキがある。一方で、温湿度など光以外の環境要因や光質、水ストレスの変化は樹冠と比べて小さい可能性があり、枝と樹冠では光環境と個葉特性の関係が異なる可能性がある。高精度レーザースキャナーの普及で葉分布の詳細な記述が可能となり、成木であっても個葉レベルで光環境を再現できるようになった。枝と樹冠で関係が異なる場合、葉面の光だけでは個葉特性の空間的変化を再現できない。ブナ成木の樹冠全体と樹冠最上部にある枝を対象に、葉面の光環境と個葉特性の関係を調べ比較した。樹冠と枝内の相対光量子束密度(rPPFD)の変化幅は、それぞれ5~100%、30~80%であった。樹冠内ではrPPFDの増加に対して、Pnmax、Na、LMAは増加する傾向を示したが、枝内ではLMAは一定であり、Naは低下する傾向を示した。樹冠と枝では、光環境と個葉特性の関係が異なることがわかった。