日本では食文化として山菜やキノコの採取・喫食が行われている。かつては「山の幸」として生活上必要な食料であったが、現代日本においては嗜好品としての性格が強く文化活動としての採取が中心である。こうした山菜・キノコ類には食中毒の元となる成分を含んでいるものも多く、厚生労働省の食中毒案件のデータにも例年「植物性自然毒」による事例が報告されている。森林レクリェーションなど保健休養的な森林利用が活発になるにつれ山菜・キノコ類を採取・喫食することの魅力・興味も増しており、食中毒になら内容に「安全に森林を楽しむ」対策が必要である。そこで本研究では、山菜・キノコ類の喫食による食中毒を少しでも減らすための方策としてどのような手法が効果的かを検討するため、まず食中毒事故の発生傾向を詳しく検討した。分析の結果、9月から10月に植物性自然毒、特にキノコ類による食中毒事故が増加することや近年の山菜の誤食事故は庭で栽培している植物によるものが増えていることなどが見てとれた。また山菜による食中毒事故は4月から5月に多く見られるものの、根を食用にする植物の誤食など季節に関係なく発生しやすいパターンがあることがわかった。