主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
高山に生育する植物では、葉の主要な色素であるカロチノイドが、低温・強光条件で生じやすい光阻害の回避に重要な役割を担う。環境適応には、遺伝的適応と表現型可塑性の二つがあるが、カロチノイドがどの程度、遺伝的に固定されているのかはよく分かっていない。本研究では、先行研究で自生標高の環境に局所適応しているとされるトドマツを対象に、カロチノイドの遺伝的支配やその役割を明らかにすることを目的とした。低標高個体と高標高個体を相互に交雑した産地試験地(交配組合せ:低×低、低×高、高×低、高×高)において、夏(2018年8月)と冬(2019年2月)に、カロチノイドおよび光合成パラメータを測定し、交配組合せ間での比較を行うことで、カロチノイドの遺伝的支配・遺伝様式について検証し、カロチノイドが環境適応に果たす役割について考察した。その結果、夏季に比べて冬季はカロチノイド全体が大幅に増加したが、各組合せ間での有意差はないことから、カロチノイドへの遺伝的支配は弱く、可塑性を持つことが示唆された。また、Fv/FmやY(NPQ)などの光合成パラメータの値から、冬季のカロチノイドの増加には熱放散が関与している可能性が示唆された。