主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
葉脈は葉の水利用や光合成を介し,樹木の成長を規定する要素である.近年,細脈の周りの維管束鞘細胞へリグニンが沈着すると葉の通水性が低下することが示された.一方,リグニン沈着のメリットはわかっていない.そこで,本研究では葉の生理特性に大きく関わる細脈に着目し,維管束鞘細胞へリグニンが沈着することで,葉の水利用・力学特性がどう変わるかを調べた.
冷温帯林の18樹種において,リグニン沈着の有無を調べ,沈着が有る種とない種それぞれにおいて,葉の水利用(葉の乾燥耐性,日中の乾燥ストレスなど)や力学・構造特性(パンチ強度,葉肉細胞の細胞壁弾性率など)と細脈密度(面積当たりの細脈長)の関係を検討した.
維管束鞘細胞にリグニンが沈着した種では,葉の乾燥耐性,細胞壁弾性率が高く乾燥下でもしおれにくかった.また,細脈密度と葉の諸特性との関係はリグニン沈着の有無で異なり,沈着した種では葉のパンチ強度,乾物割合,細胞壁弾性率と細脈密度が正の,葉のしおれやすさとは負の相関を示した一方,沈着なしの種ではこのような関係は見られなかった.以上から,リグニン沈着は葉の乾燥耐性および耐久性の向上に寄与していることが示唆された.