生理心理学と精神生理学
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内的基準による意思決定におけるFRN様成分――閾下提示選択パラダイムを用いた検討――
宮城 円水落 亮平楊 琬璐柏原 志保宮谷 真人中尾 敬
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2016 年 34 巻 1 号 p. 27-39

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抄録

意思決定を通して選択したものの価値が学習されることは広く知られている。こうした価値の学習過程は,内的基準による意思決定 (例えば選好課題) と外的基準による意思決定 (例えばギャンブル課題) という異なる意思決定課題を用いて検討がなされてきた。外的基準による意思決定における価値の学習過程は強化学習理論によって説明され,選択したものの価値更新の程度を規定する予測誤差はフィードバック関連陰性電位 (FRN) の振幅に反映されることが知られている。近年,内的基準による意思決定における価値の学習過程 (選択による選好の変化:CIPC) についても,外的基準による意思決定と同様に強化学習理論によって説明できることが示唆されていることから,CIPCの生起量はFRNの振幅と関連すると予測されるが,この点については未だ検討されていない。本研究は,内的基準による意思決定におけるFRN様成分とCIPCとの関連について閾下提示選択パラダイムを用いて検討した。このパラダイムでは,同程度に好ましい2つのアイテムを閾下提示してより好ましい方を選択させた後,選択結果について偽のフィードバックを与える。実験の結果,内的基準による意思決定においてもFRN様成分が観察されたが,その振幅とCIPCに関連はみられなかった。このことから,閾下提示選択パラダイムにおけるFRN様成分の振幅は価値更新の程度ではなく,好み選択がうまく遂行できた程度を反映している可能性が示唆された。

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© 2016 日本生理心理学会
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