日本森林学会大会発表データベース
第131回日本森林学会大会
セッションID: P2-263
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学術講演集原稿
気温変化に対するツキノワグマの環境選択と活動状態の変化
*小池 伸介岩崎 正栃木 香帆子長沼 知子稲垣 亜希乃山﨑 晃司
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抄録

動物は環境に対して恒常性を持ち、その中に熱調節機能がある。これには生理的な適応とそれを補助する行動的な適応がある。この行動的な適応の一つに、高温を避けるために、滞在場所を気温が高い場所から相対的に気温が低い場所に変化させる行動(以下、熱回避行動)がある。一般的に、熱回避行動を行う際でも、なるべく食物資源量の多い場所を選び、採食量を最大化させているとも考えられているが、実際に検証された事例はほとんどない。そこで、足尾・日光山地におけるツキノワグマの行動情報と気温情報を比較することで、気温変化に対するツキノワグマの生息地選択の変化により熱回避行動の有無を検証した。さらに、ツキノワグマの活動状態を3つに分類し(移動・休息・採食)、その活動状態の選択が気温変化によりどのように変化するのかを明らかにした。その結果、夏の朝と昼に熱回避行動が認められた。さらに、昼には熱回避場所となる広葉樹林において採食を行う可能性が最も高くなることが分かった。しかし、夏の採食適地は、広葉樹林(果実)と開放地(アリ)であるため、温暖化による気温の上昇がツキノワグマの栄養状態の変化を引き起こす可能性が考えられる。

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