モンゴル国の森林ステップの森林と草原の境界が明確な地域において、森林と草原それぞれの土壌中の無機態窒素と植物の炭素・窒素同位体比を調べた。モンゴル国立大学Udleg演習林の丘陵地の斜面にある森林と草原において、約20~30m間隔の格子状に15か所から土壌と周辺に生育する樹木の葉を採取した。土壌試料は抽出液中の無機態窒素濃度を比色定量した後、微量同位体比測定システムにより形態別の同位体比を測定した。植物試料は乾燥・粉砕後に窒素濃度と炭素および窒素同位体比を測定した。その結果、森林土壌中にはアンモニア態窒素、草原土壌中には硝酸態窒素の存在量が相対的に多く、カラマツなどの木本種はアンモニア態窒素が相対的に多い立地に生育していた。アンモニア態窒素の同位体比は草原より森林で低く、カラマツの葉の窒素同位体比も同様に草原より森林で低くなったが、斜面下部では高くなる傾向があった。水利用効率を示す炭素同位体比は樹種間で異なるが、同一樹種における森林と草原の差はなく、森林と草原では、水分環境よりも窒素などの養分環境が異なる可能性が考えられた。