日本森林学会大会発表データベース
第132回日本森林学会大会
セッションID: P-341
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学術講演集原稿
ブナ開葉時期の変異がブナカイガラタマバエのゴール形成数に及ぼす影響
*野中 佳祐鎌田 直人
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抄録

寄主-寄生者間のフェノロジカルミスマッチは、寄生者個体群の動態や進化に影響する。日本各地のブナを植栽した産地別試験地(埼玉県秩父市)では、開葉時期に産地間変異があるため、試験地周辺の自生個体群と開葉フェノロジーが異なることが予想される。また、ブナカイガラタマバエ(以下、本種)は、ブナのみを寄主とする年1化性のゴール形成性昆虫で、成虫の寿命は約2~3日と短く、産卵のフェノロジカルウィンドウが狭い。本種は試験地近傍の個体群に由来するため、産地別試験地ではブナと本種との間でフェノロジーのずれが生じ、ゴール形成に影響する可能性が考えられた。本研究では、ブナの開葉時期、本種のフェノロジカルウィンドウ・羽化と飛翔の消長、および開葉と羽化の時期・ゴール形成数との関係を調べ、秩父産のみが植栽された試験地と比較を行った。本種の羽化時期は寄主の開葉時期と正の相関を示し、羽化・飛翔時期は試験地間で異なっていた。産地別試験地の開葉時期および飛翔時期のピーク、ゴール形成数のピークとなる寄主の開葉時期が一致していた。以上のように、本種のフェノロジーの変化によって寄主とのフェノロジカルミスマッチに適応していた。

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