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第133回日本森林学会大会
セッションID: A8
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学術講演集原稿
保安林制度と林業経営との関係:常陸太田市民有水源かん養保安林に注目して
*加藤 葉月立花 敏
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抄録

森林や林地の保続にとって保安林制度は重要な役割を果たしてきた。保安林制度と林業経営との関係について、藤掛・大地(2020)は水源かん養保安林を事例に主伐率の分析を行い林業経営の可能性を示した。この結果を参考に、本研究では民有林保安林における制度運用の把握及び民有水源かん養保安林と林業経営との関係性の分析を目的に、茨城県常陸太田市を事例に県行政担当者及び森林所有者5名に対して聞き取り調査と資料収集を行った。その結果、水源かん養保安林の所有者は概ね100ha以上の森林を所有し、その過半が水源かん養保安林であった。彼らは森林の継続的な所有と管理の意思を有し、木材生産による収入を得るべく林業経営を行っていた。また、常陸太田市における2016~20年度の主伐率と間伐率を保安林と非保安林とで比べると、1年平均で主伐率が0.60%と0.08%、間伐率は1.51%と0.60%であり、保安林の伐採率が高いことが分かった。水源かん養保安林の指定により固定資産税の非課税、相続税評価額の30%控除を受けられることから、税負担の軽減を図りながら主伐を行うことが可能である。水源かん養保安林の指定は民有林の持続的林業経営に寄与すると考えられる。

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