主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第133回日本森林学会大会
回次: 133
開催地: 山形大学によるオンライン開催
開催日: 2022/03/27 - 2022/03/29
生業や時代の変化と共に自然資源利用の機会が減少する中でも、京都市鞍馬においてサンショウは現在も多くの住民に利用され続けている。
本研究では、鞍馬でのサンショウの採取・利用の現状、過去からの変化を把握することで、住民とサンショウとの多様な関係性を理解し、関係性が持続してきた要因を検討することを目的とした。その上で、鞍馬住民27世帯に対する聞き取り調査、採取環境の把握のための現地調査を行った。
その結果、高齢化や資源の減少などが要因となり、(1)採取者は減少し、(2)採取場所は山での採取から自宅周辺での採取中心に、(3)採取木は野生木から自然生えを植え替えた木中心に変化していた。
採取したサンショウは、主に花と新芽の佃煮や実を用いた山椒こぶ等の料理に利用され、作り方は各家庭で継承されていた。サンショウ利用には採取者自身が香りや味を楽しむ以外にもおすそ分けを通して人と交流する価値、地域の特産としての価値を感じる人も存在した。
鞍馬では自然に若芽が生える自然環境や手入れが少なくてよい生態的な特性、佃煮作りの食文化、住民が感じる利用価値などによって、半栽培でのサンショウ利用が継続していると推察された。