日本林學會北海道支部講演集
Online ISSN : 2433-0825
シラカバ材ヘミセルロースのクラフト蒸解中における分解
三宅 基夫
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1965 年 13 巻 p. 7-10

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抄録

クラフト法による広葉樹材のパルプ化は,樹種を選ばず蒸解時間が短く,強度が高く,廃液等の公害問題もなく,すぐれた方法である。然るにクラフト法によるパルプ化で,脱リグニン度を高めるためアルカリ濃度を高めると,木材中の炭水化物ポリマーの多量の加水分解をともない,アルカリ消費の大部分はこの分解により生ずる酸の中和に消費される。木材中の炭水化物ポリマーの分解を出来るだけ抑制し,かつリグニンを出来るだけ完全に除去することが,クラフト法によるパルプ化の最も重要な問題の一つであり,これにより収率の高い製紙用パルプを得ることが出来る。この目的のため,最近水素化硼素ナトリウム等の還元剤で,木材を前処理したり,蒸解液に添加したりすることにより,炭水化物ポリマーのアルカリ分解を阻止し,収率を高める研究が行なわれているが,これ等の研究は主として針葉樹についての報告が多く,広葉樹材についての報告は少ない。然るに広葉樹材は針葉樹材より多くの炭水化物ポリマーを含有するので,より重要な問題と思い,北海道産広葉樹材で,パルプ材として重要視されているシラカバ材を用い,水素化硼素ナトリウムを蒸解液に添加し,炭水化物ポリマー分解阻止効果に関する予備的な実験を行なって見た。又クラフト蒸解に先だち,広葉樹材を酸又はアルカリで前処理すると,ペントザンの変性が起り,この変性されたペントザンは,後のクラフト蒸解に抵抗を示すと報告されているので,これ等前処理により,収率の向上が期待出来るかどうかについても実験を行なった。

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© 1965 北方森林学会
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