種々の塩類の高濃度溶液が水に難溶あるいは不溶の有機および無機化合物を溶解する性質は1916年にNEUBERGにより発見され,ハイドロトロピーと名づけられた。その後この現象は各種化学工業に応用されてきたが,1940年頃MCKEEとその協力者により,リグニンの単離やパルプの製造に利用されるようになった。従来我国においてもこれらの研究に関する報告があるが,その殆んどが木粉を対象としたものであるので,本報告ではササとアカダモの手作りチップを使用し,ハイドロトロピック塩の中からキシレンスルホン酸ソーダを選び,その25%溶液処理によって得たパルプ(HP)とクラフト法によって得たパルプ(KP)について,化学的組成と物理的性質を調べ,パルプ品質の比較検討を試みた。本報告の実験を行なうにあたり,種々とお世話いただきました,北海道大学林産製造学教室の諸先生に厚くお礼を申し上げます。