2021 年 28 巻 3 号 論文ID: 1
本研究の目的は、新型コロナ(COVID-19)感染拡大に伴う緊急事態宣言(2020年4-5月)下の人々の外出自粛行動がフードシステムに及ぼす影響とそれへの対応を、京都を事例として明らかにすることである。第一に、京都市中央卸売市場の関係事業者(生産者・出荷者、卸売業者、仲卸業者、買参人・買出人)141名を対象にアンケート調査を実施し、各生産・流通段階における連鎖的な影響の把握を試みた。その結果、スーパーマーケットを除き全ての生産・流通段階で6割以上の事業者(とりわけ水産部門)が経済的影響を被っている実態が明らかになった。第二に、消費者656名へのWEBアンケート調査を実施した結果、緊急事態下でも選択されうる食行動(買い物主体・場所、料理主体、食事内容〔昼食除く〕、共食者など)は、実際にはそれ以前の状態から大きく変化していないことも明らかになった。本研究は、京都という限定された地域ではあるものの、フードシステムの各段階へのCOVID-19の社会的影響を包括的に分析した最初の実証研究のうちの一つである。