1999 年 11 巻 6 号 p. 1067-1077
これまでの情報処理はバーバル情報の処理に重きを置き、曖昧さを許容してないものが多い。これからの情報処理には、曖昧さを許容し、従来のバーバル情報だけでなく、ノンバーバル情報も取り扱うことが求められる。そこで本論文では、感情を表現するノンバーバル情報の1つである表情を情報処理に取り入れることを考え、表情と状況と感情を考慮した人とコンピュータとのコミュニケーションの一例として、感情推論モデルと経路決定システムの対話モデルの構築を試みる。感情推論モデルは人の状況、表情と感情の間の関係を考慮しているモデルで、表情と状況を入力することにより、その状況における表情から感じられる感情を推論する。一方、経路決定システムは目的地への道順が言語的表現で与えられたとき、人のように迷いながら目的地を探すシステムである。経路決定システムは、システムの状況、例えばシステムが道に迷ったときなどに応じて感情を表情で表現する。本論文では、感情推論モデルと経路決定システムを2台のコンピュータ上に独立に動かして対話を試みる。これによって、顔情報やその状況を考慮したコンピュータ間の会話が実現できる。そして会話例から本対話モデルの有効性を示す。